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民法改正の新旧対称PDFをエクセル(横書き)に一発で変換する方法

民法(債権関係)改正法新旧対照条文のPDFは法務省HPにありますが、これ、縦書きPDFで業務上ちょっと使い辛い、できれば「横書きエクセル」や「Googleスプレッドシート」にしてくれたら助かるのにと思っている法曹マンも多いと思うので、一発で変換する方法調べました。

 

が、残念ながらとても難しいので、お忙しい法曹マンのみなさまの代わりに、転記したものを載せます。

 

free-shoshi.com

 

 

 

参考

法務省民法の一部を改正する法律(債権法改正)について

法務省
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トップページ > 法務省の概要 > 各組織の説明 > 内部部局 > 民事局 > 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について
民法の一部を改正する法律(債権法改正)について
平成29年11月2日
平成29年12月15日更新
平成30年 3月23日更新
平成30年 5月10日更新(改正事項別の説明資料のファイルを掲載しました。保証及び消費貸借に関する説明資料を修正し,債務引受及び寄託に関する説明資料を新しく追加しました。)
平成31年 3月27日更新(「民法の一部を改正する法律の概要」の欄に経過措置に関する説明資料を新しく追加しました。「ポスター・パンフレット」の欄に「事件や事故に遭われた方へ」,「賃貸借契約に関するルールの見直し」及び「売買,消費貸借,定型約款などに関するルールの見直し」を新しく追加しました。)
令和元年 6月5日更新 (経過措置に関する説明資料を修正しました。)
法務省民事局

  平成29年5月26日,民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)が成立しました(同年6月2日公布)。
民法のうち債権関係の規定(契約等)は,明治29年(1896年)に民法が制定された後,約120年間ほとんど改正がされていませんでした。今回の改正は,民法のうち債権関係の規定について,取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に,社会・経済の変化への対応を図るための見直しを行うとともに,民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から実務で通用している基本的なルールを適切に明文化することとしたものです。
今回の改正は,一部の規定を除き,平成32年(2020年)4月1日から施行されます(詳細は以下の「民法の一部を改正する法律の施行期日」の項目をご覧ください。)。
民法の一部を改正する法律の概要
 民法の一部を改正する法律の概要については,以下の資料をご覧ください。(随時更新予定)

■ 法律 【PDF】
■ 新旧対照条文 【PDF】
■ 改正の概要 【PDF】
■ Q&A 【PDF】
■ 説明資料
 -主な改正事項(1~22) 【PDF】 ※目次をクリックすると該当箇所をご覧いただけます。
 -重要な実質改正事項(1~5) 【PDF】 ※目次をクリックすると該当箇所をご覧いただけます。
     改正事項別のファイルはこちら
-経過措置 【PDF】
民法の一部を改正する法律の施行期日
  民法の一部を改正する法律の施行期日については,以下の資料をご覧ください。なお,以下の資料には,定型約款の経過措置についての注意事項も記載しています。

■ 民法(債権関係)改正法の施行期日について 【PDF】 
■ 定型約款に関する規定の適用に対する「反対の意思表示」について 【PDF】
ポスター・パンフレット ※ダウンロードしてご利用下さい
 ■ ポスター【PDF】
                 
 


■パンフレット(全般)【PDF】      ■パンフレット(保証)【PDF】
                         
                                         
                     
■パンフレット(事件や事故)【PDF】 ■パンフレット(賃貸借契約)【PDF】 ■パンフレット(売買等)【PDF】
                
    

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民法_新旧対照

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律
平成30年 7月13日 法律 第72号
民法
明治29年 4月27日 法律 第89号

施行日:平成31年 1月13日
改正前 改正後
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
◆追加◆
2 自筆証書 ◆追加◆中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2  前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書 (前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
(秘密証書遺言)
第九百七十条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2  第九百六十八条第二項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。
(秘密証書遺言)
第九百七十条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2  第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。
(普通の方式による遺言の規定の準用)
第九百八十二条  第九百六十八条第二項及び第九百七十三条から第九百七十五条までの規定は、第九百七十六条から前条までの規定による遺言について準用する。
(普通の方式による遺言の規定の準用)
第九百八十二条  第九百六十八条第三項及び第九百七十三条から第九百七十五条までの規定は、第九百七十六条から前条までの規定による遺言について準用する。

施行日:平成31年 7月〈未確定〉
改正前 改正後
目次
第一編-第四編 〔省略〕
第五編 相続
第一章-第二章 〔省略〕
第三章 相続の効力
第一節 総則 (第八百九十六条-第八百九十九条)
第二節 相続分(第九百条-第九百五条)
第三節 遺産の分割(第九百六条-第九百十四条)
第四章-第六章 〔省略〕
第七章 遺言
第一節 総則(第九百六十条-第九百六十六条)
第二節 遺言の方式
第一款 普通の方式(第九百六十七条-第九百七十五条)
第二款 特別の方式(第九百七十六条-第九百八十四条)
第三節 遺言の効力(第九百八十五条-第千三条)
第四節 遺言の執行(第千四条-第千二十一条)
第五節 遺言の撤回及び取消し (第千二十二条-第千二十七条)
第八章 遺留分 (第千二十八条-第千四十四条)
◆追加◆
目次
第一編-第四編 〔省略〕
第五編 相続
第一章-第二章 〔省略〕
第三章 相続の効力
第一節 総則 (第八百九十六条-第八百九十九条の二)
第二節 相続分(第九百条-第九百五条)
第三節 遺産の分割(第九百六条-第九百十四条)
第四章-第六章 〔省略〕
第七章 遺言
第一節 総則(第九百六十条-第九百六十六条)
第二節 遺言の方式
第一款 普通の方式(第九百六十七条-第九百七十五条)
第二款 特別の方式(第九百七十六条-第九百八十四条)
第三節 遺言の効力(第九百八十五条-第千三条)
第四節 遺言の執行(第千四条-第千二十一条)
第五節 遺言の撤回及び取消し (第千二十二条-第千四十一条)
第八章 遺留分 (第千四十二条-第千四十九条)
第九章  特別の寄与 (第千五十条)
(相続財産に関する費用)
第八百八十五条 相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。
2  前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によって得た財産をもって支弁することを要しない。
(相続財産に関する費用)
第八百八十五条 相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。
◆削除◆
◆追加◆
(共同相続における権利の承継の対抗要件
第八百九十九条の二   相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2  前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
(遺言による相続分の指定)
第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。 ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。
(遺言による相続分の指定)
第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。 ◆削除◆
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。
◆追加◆
(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)
第九百二条の二   被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。
特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、 前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、 その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。
◆追加◆
特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、 第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、 その意思に従う。
4  婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
◆追加◆
(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)
第九百六条の二   遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2  前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。
(遺産の分割の協議又は審判等)
第九百七条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の ◆追加◆分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その ◆追加◆分割を家庭裁判所に請求することができる。 ◆追加◆
3  前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
(遺産の分割の協議又は審判等)
第九百七条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の 全部又は一部の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その 全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。 ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
3  前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
◆追加◆
(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第九百九条の二   各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。
(包括遺贈及び特定遺贈)
第九百六十四条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。 ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。
(包括遺贈及び特定遺贈)
第九百六十四条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。 ◆削除◆
(遺言執行者の任務の開始)
第千七条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
◆追加◆
(遺言執行者の任務の開始)
第千七条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2  遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は ◆追加◆、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
◆追加◆
2 第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。
(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は 、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2  遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
3 第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
◆追加◆
◆追加◆
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
2  前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3  前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。
(特定財産に関する遺言の執行)
第千十四条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
◆追加◆
◆追加◆
◆追加◆
(特定財産に関する遺言の執行)
第千十四条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
2  遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3  前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
4  前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(遺言執行者の地位)
第千十五条   遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。
(遺言執行者の行為の効果)
第千十五条   遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。
(遺言執行者の復任権)
第千十六条   遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2  遺言執行者が前項ただし書の規定により第三者にその任務を行わせる場合には、相続人に対して、第百五条に規定する責任を負う。
(遺言執行者の復任権)
第千十六条   遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2  前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。
◆追加◆
第二節   配偶者短期居住権
(配偶者短期居住権)
第千三十七条   配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一  居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二  前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日
2  前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3  居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。
遺留分の帰属及びその割合)
第千二十八条  兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として ◆追加◆、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合 に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合  被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合  被相続人の財産の二分の一
◆追加◆
遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条  兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として 、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合 を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合  ◆削除◆三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合  ◆削除◆二分の一
2  相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
遺留分の算定)
第千二十九条   遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を 控除して、これを算定する。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条   遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を 控除した額とする。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
第千三十条  贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
◆追加◆
◆追加◆
第千四十四条  贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2  第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3  相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
(遺贈又は贈与の減殺請求)
第千三十一条   遺留分権利者及びその承継人は、遺留分保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。
◆削除◆
(条件付権利等の贈与又は遺贈の一部の減殺)
第千三十二条   条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利を贈与又は遺贈の目的とした場合において、その贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、遺留分権利者は、第千二十九条第二項の規定により定めた価格に従い、直ちにその残部の価額を受贈者又は受遺者に給付しなければならない。
◆削除◆
(贈与と遺贈の減殺の順序)
第千三十三条   贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。
◆削除◆
(遺贈の減殺の割合)
第千三十四条   遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
◆削除◆
(贈与の減殺の順序)
第千三十五条   贈与の減殺は、後の贈与から順次前の贈与に対してする。
◆削除◆
(受贈者による果実の返還)
第千三十六条   受贈者は、その返還すべき財産のほか、減殺の請求があった日以後の果実を返還しなければならない。
◆削除◆
(受贈者の無資力による損失の負担)
第千三十七条   減殺を受けるべき受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
◆削除◆
(負担付贈与の減殺請求)
第千三十八条   負担付贈与は、その目的の価額から負担の価額を控除したものについて、その減殺を請求することができる。
◆削除◆
(不相当な対価による有償行為)
第千三十九条   ◆追加◆
◆追加◆ 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、 これを贈与とみなす。 この場合において、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。
◆削除◆
第千四十五条   負担付贈与がされた場合における第千四十三条第一項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
2 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、 当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。 ◆削除◆
◆追加◆
遺留分侵害額の請求)
第千四十六条   遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2  遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一  遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
二  第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三  被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額
◆追加◆
(受遺者又は受贈者の負担額)
第千四十七条   受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
一  受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
二  受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
三  受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
2  第九百四条、第千四十三条第二項及び第千四十五条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。
3  前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。
4  受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
5  裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。
(受贈者が贈与の目的を譲渡した場合等)
第千四十条   減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、遺留分権利者にその価額を弁償しなければならない。ただし、譲受人が譲渡の時において遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは、遺留分権利者は、これに対しても減殺を請求することができる。
2  前項の規定は、受贈者が贈与の目的につき権利を設定した場合について準用する。
◆削除◆
遺留分権利者に対する価額による弁償)
第千四十一条   受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。
2  前項の規定は、前条第一項ただし書の場合について準用する。
◆削除◆
( 減殺請求権の期間の制限)
第千四十二条   減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び 減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第千四十八条   遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び 遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
遺留分の放棄)
第千四十三条  相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
遺留分の放棄)
第千四十九条  相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
代襲相続及び相続分の規定の準用)
第千四十四条   第八百八十七条第二項及び第三項、第九百条、第九百一条、第九百三条並びに第九百四条の規定は、遺留分について準用する。
◆削除◆
◆追加◆
第九章   特別の寄与
◆追加◆
第千五十条   被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2  前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
3  前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4  特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5  相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。

施行日:平成32年 4月 1日
改正前 改正後
(不特定物の遺贈義務者の担保責任)
第九百九十八条   不特定物を遺贈の目的とした場合において、受遺者がこれにつき第三者から追奪を受けたときは、遺贈義務者は、これに対して、売主と同じく、担保の責任を負う。
2  不特定物を遺贈の目的とした場合において、物に瑕疵があったときは、遺贈義務者は、瑕疵のない物をもってこれに代えなければならない。
(遺贈義務者の引渡義務)
第九百九十八条   遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を、相続開始の時(その後に当該物又は権利について遺贈の目的として特定した場合にあっては、その特定した時)の状態で引き渡し、又は移転する義務を負う。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(第三者の権利の目的である財産の遺贈)
第千条   遺贈の目的である物又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であるときは、受遺者は、遺贈義務者に対しその権利を消滅させるべき旨を請求することができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
第千条   削除
(撤回された遺言の効力)
第千二十五条 前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が ◆追加◆詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
(撤回された遺言の効力)
第千二十五条 前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が 錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

施行日:平成32年 7月〈未確定〉
改正前 改正後
目次
第一編-第四編 〔省略〕
第五編 相続
第一章-第六章 〔省略〕
第七章 遺言
第一節 総則(第九百六十条-第九百六十六条)
第二節 遺言の方式
第一款 普通の方式(第九百六十七条-第九百七十五条)
第二款 特別の方式(第九百七十六条-第九百八十四条)
第三節 遺言の効力(第九百八十五条-第千三条)
第四節 遺言の執行(第千四条-第千二十一条)
第五節 遺言の撤回及び取消し (第千二十二条-第千四十一条)
◆追加◆
第八章 遺留分(第千四十二条-第千四十九条)
第九章 特別の寄与(第千五十条)
目次
第一編-第四編 〔省略〕
第五編 相続
第一章-第六章 〔省略〕
第七章 遺言
第一節 総則(第九百六十条-第九百六十六条)
第二節 遺言の方式
第一款 普通の方式(第九百六十七条-第九百七十五条)
第二款 特別の方式(第九百七十六条-第九百八十四条)
第三節 遺言の効力(第九百八十五条-第千三条)
第四節 遺言の執行(第千四条-第千二十一条)
第五節 遺言の撤回及び取消し (第千二十二条-第千二十七条)
第八章  配偶者の居住の権利
第一節  配偶者居住権 (第千二十八条-第千三十六条)
第二節  配偶者短期居住権 (第千三十七条-第千四十一条)
第九章 遺留分(第千四十二条-第千四十九条)
第十章 特別の寄与(第千五十条)
◆追加◆
◆追加◆
第八章   配偶者の居住の権利
第一節   配偶者居住権
◆追加◆
(配偶者居住権)
第千二十八条   被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一  遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二  配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2  居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3  第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。
◆追加◆
(審判による配偶者居住権の取得)
第千二十九条   遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
一  共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
二  配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。
◆追加◆
(配偶者居住権の存続期間)
第千三十条   配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
◆追加◆
(配偶者居住権の登記等)
第千三十一条   居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
2  第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。
◆追加◆
(配偶者による使用及び収益)
第千三十二条   配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
2  配偶者居住権は、譲渡することができない。
3  配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
4  配偶者が第一項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。
◆追加◆
(居住建物の修繕等)
第千三十三条   配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる。
2  居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる。
3  居住建物が修繕を要するとき(第一項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
◆追加◆
(居住建物の費用の負担)
第千三十四条   配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
2  第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。
◆追加◆
(居住建物の返還等)
第千三十五条   配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物の所有者は、配偶者居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
2  第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百二十一条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。
◆追加◆
(使用貸借及び賃貸借の規定の準用)
第千三十六条   第五百九十七条第一項及び第三項、第六百条、第六百十三条並びに第六百十六条の二の規定は、配偶者居住権について準用する。
◆追加◆
第二節   配偶者短期居住権
◆追加◆
(配偶者短期居住権)
第千三十七条   配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一  居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二  前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日
2  前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3  居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。
◆追加◆
(配偶者による使用)
第千三十八条   配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない。
2  配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。
3  配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。
◆追加◆
(配偶者居住権の取得による配偶者短期居住権の消滅)
第千三十九条   配偶者が居住建物に係る配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は、消滅する。
◆追加◆
(居住建物の返還等)
第千四十条   配偶者は、前条に規定する場合を除き、配偶者短期居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物取得者は、配偶者短期居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
2  第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百二十一条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。
◆追加◆
(使用貸借等の規定の準用)
第千四十一条   第五百九十七条第三項、第六百条、第六百十六条の二、第千三十二条第二項、第千三十三条及び第千三十四条の規定は、配偶者短期居住権について準用する。
第千二十八条から第千四十一条まで   削除
◆削除◆
第八章  遺留分
第九章  遺留分
第九章  特別の寄与
第十章  特別の寄与

民法の一部を改正する法律 改正附則
平成29年6月2日 法律 第44号

施行日:平成32年 7月〈未確定〉
改正前 改正後
◆追加◆ 附 則(平成二九・六・二法四四)抄
(遺言執行者の 復任権及び報酬に関する経過措置)
第三十六条  施行日前に遺言執行者となった者の旧法第千十六条第二項において準用する旧法第百五条に規定する責任については、なお従前の例による。
2 施行日前に遺言執行者となった者の報酬については、新法第千十八条第二項において準用する新法第六百四十八条第三項及び第六百四十八条の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。
(遺言執行者の ◆削除◆報酬に関する経過措置)
第三十六条  ◆削除◆
◆削除◆ 施行日前に遺言執行者となった者の報酬については、新法第千十八条第二項において準用する新法第六百四十八条第三項及び第六百四十八条の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律 改正附則
平成30年7月13日 法律 第72号

改正前 改正後
◆追加◆ 附 則(平成三〇・七・一三法七二)抄
◆追加◆
(施行期日)
第一条   この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一  附則第三十条及び第三十一条の規定 公布の日
二  第一条中民法第九百六十八条、第九百七十条第二項及び第九百八十二条の改正規定並びに附則第六条の規定 公布の日から起算して六月を経過した日〔平成三一年一月一三日〕
三  第一条中民法第九百九十八条、第千条及び第千二十五条ただし書の改正規定並びに附則第七条及び第九条の規定 民法の一部を改正する法律(平成二十九年法律第四十四号)の施行の日〔平成三二年四月一日
四  第二条並びに附則第十条〔中略〕の規定 公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日
五  〔省略〕
◆追加◆
民法の一部改正に伴う経過措置の原則)
第二条   この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に開始した相続については、この附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による。
◆追加◆
(共同相続における権利の承継の対抗要件に関する経過措置)
第三条   第一条の規定による改正後の民法(以下「新民法」という。)第八百九十九条の二の規定は、施行日前に開始した相続に関し遺産の分割による債権の承継がされた場合において、施行日以後にその承継の通知がされるときにも、適用する。
◆追加◆
(夫婦間における居住用不動産の遺贈又は贈与に関する経過措置)
第四条   新民法第九百三条第四項の規定は、施行日前にされた遺贈又は贈与については、適用しない。
◆追加◆
(遺産の分割前における預貯金債権の行使に関する経過措置)
第五条   新民法第九百九条の二の規定は、施行日前に開始した相続に関し、施行日以後に預貯金債権が行使されるときにも、適用する。
2  施行日から附則第一条第三号に定める日の前日までの間における新民法第九百九条の二の規定の適用については、同条中「預貯金債権のうち」とあるのは、「預貯金債権(預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権をいう。以下同じ。)のうち」とする。
◆追加◆
(自筆証書遺言の方式に関する経過措置)
第六条   附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日前にされた自筆証書遺言については、新民法第九百六十八条第二項及び第三項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
◆追加◆
(遺贈義務者の引渡義務等に関する経過措置)
第七条   附則第一条第三号に掲げる規定の施行の日(以下「第三号施行日」という。)前にされた遺贈に係る遺贈義務者の引渡義務については、新民法第九百九十八条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2  第一条の規定による改正前の民法第千条の規定は、第三号施行日前にされた第三者の権利の目的である財産の遺贈については、なおその効力を有する。
◆追加◆
(遺言執行者の権利義務等に関する経過措置)
第八条   新民法第千七条第二項及び第千十二条の規定は、施行日前に開始した相続に関し、施行日以後に遺言執行者となる者にも、適用する。
2  新民法第千十四条第二項から第四項までの規定は、施行日前にされた特定の財産に関する遺言に係る遺言執行者によるその執行については、適用しない。
3  施行日前にされた遺言に係る遺言執行者の復任権については、新民法第千十六条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
◆追加◆
(撤回された遺言の効力に関する経過措置)
第九条   第三号施行日前に撤回された遺言の効力については、新民法第千二十五条ただし書の規定にかかわらず、なお従前の例による。
◆追加◆
(配偶者の居住の権利に関する経過措置)
第十条   第二条の規定による改正後の民法(次項において「第四号新民法」という。)第千二十八条から第千四十一条までの規定は、次項に定めるものを除き、附則第一条第四号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第四号施行日」という。)以後に開始した相続について適用し、第四号施行日前に開始した相続については、なお従前の例による。
2  第四号新民法第千二十八条から第千三十六条までの規定は、第四号施行日前にされた遺贈については、適用しない。
◆追加◆
政令への委任)
第三十一条   この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

 

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民法(債権関係)改正

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民法(債権関係)改正批判
作成:2015年9月6日
更新:2015年12月18日
明治学院大学法学部教授 加賀山 茂

目次
Ⅰ 『民法改正案の評価』の出版
ビデオ教材(民法(債権関係)改正法案の第三者評価)の作成
Ⅱ 『民法(債権関係)改正法案新旧対照表』の出版
Ⅲ 民法(債権関係)改正の経緯と批判
Ⅳ 新法典論争を引き起こすためのキャッチ・コピー(民法改メテ 民法体系 滅フ など)
目次(Topに戻る)
Ⅰ 『民法改正案の評価』信山社(2015/11)の出版
加賀山茂『民法改正案の評価-債権関係法案の問題点と解決策-』信山社(2015/11)の出版について


加賀山茂『民法改正案の評価』
-債権関係法案の問題点と解決策-
信山社(2015/11)
先に出版した加賀山茂 編著『民法(債権関係)改正法案の〔現・新〕条文対照表』<条文番号整理案付>信山社(2015/7)に引き続き,民法(債権関係)改正案について,以下の項目について,第三者として評価を試みるものである。

Ⅰ 第三者評価
法案の「改正理由」に対する適合性の評価
改正理由に挙げられている4つの項目である(1)消滅時効の期間の統一化,(2) 法定利率を変動させる規定の新設,(3) 保証人の保護,(4) 定型約款に関する規定の新設,および,今回の改正の目玉とされる(5) 「原始的不能(または特定物)のドグマ」からの解放(瑕疵担保責任の削除)の5つの項目に関する評価を行っている。
法務大臣の「諮問」に対する適合性の評価
法務大臣の諮問第88(2009)の第1項目である「民法制定以来の社会・経済の変化に対応」しているかどうかについて,(1)少子・高齢化,(2) 情報化,(3)国際化に対応しているかどうかの観点から評価を行っている。
法務大臣の諮問第88号(2009)の第2項目である「国民一般にわかりやすいもの」となっているかどうかについて,(1)個々の条文が問題解決の判断基準として明確であるかどうか,(2)条文間で整合性が取れているかどうか,(3) 複雑なルールの場合には,場合分けの基準が明確であり,かつ,すべての場合が尽くされているかどうかという3つの基準を設定し,その観点から評価を行っている。
その他の評価と結論
改正案のその他の問題として,条文内の矛盾,条文間の不整合性,実体法規範と立証責任規範との相克について,解決策を提言している。
今回の民法(債権関係)改正案は,諮問に不適合であることを論証し,改正手続きは,一からやり直すべきであり,その際には,諮問自体の改善と適正手続きが重視されるべきことを主張している。
Ⅱ 改正案の修正案
今回の改正案のうち,比較的改善が簡単な条文番号の不統一の修正案,障害者権利条約に違反するおそれがある成年後見制度の見直し案を提案している。
Ⅲ 研究課題
民法の体系的理解を求める人々のために5つの研究課題とそのヒント,解答例を示し,今回の改正案の修正案のあり方,今後の民法改正において注意すべき点を具体的に示している。
ビデオ教材(民法(債権関係)改正法案の第三者評価)の作成
加賀山茂「民法(債権関係)改正法案の第三者評価」 (2015/09/30)
↓下の画像をクリックすると,ビデオを見ることができます。

〔ビデオ教材〕 民法(債権関係)改正案の第三者評価(50分)
ビデオ教材 (50分)
PowerPoint
PDF
2015年3月31日に国会に提出された民法の一部を改正する法律案,すなわち,民法(債権関係)改正案について,民法(債権関係)改正に一切タッチしていない民法学者として,以下の順序で第三者評価をしたもの(ビデオ教材のほか,プレゼン用のPowerPoint,メモ用のPDFファイルを用意している)。
立法手続が適正だったかどうか
先行研究のうち,実名を明らかにしている鈴木仁志『民法改正の真実』講談社(2013)に依拠して,改正案の作成過程が適正手続きに基づいたものとなっているかどうか評価している。
改正理由に適合しているかどうか
改正法案と同時に国会に提出された「改正理由」に示された項目(時効期間の統一,法定利率の変動制,保証人の保護,約款規制の新設等)について,改正案が社会経済の変化に対応した法案となっているかどうかについて評価している。
諮問88号(2009)に適合しているかどうか
改正案が,民法制定以後の社会・経済の変化に対応するものになっているかどうか,また,国民一般にとってわかりやすいものとなっているうかどうかについて評価している。 
Ⅱ 『民法(債権関係)改正法案新旧対照表』信山社(2015/7)の出版
加賀山茂 編著『民法(債権関係)改正法案の〔現・新〕条文対照表』<条文番号整理案付>信山社(2015/7)の出版について
 
2015年3月31日に国会に提出された「民法の一部を改正する法律案」に関して,法務省がそのホームページで公表している「新旧対照条文」(http://www.moj.go.jp/content/001142671.pdf)は,条文番号が異なっても内容的に相応する新旧条文を正しく対照する箇所(10頁の第105条と第106条の対照,第106条と第107条との対照など)がある一方で,以下のように,単に条文番号が同じという形式的な理由で,内容的には異なる条文の比較対照が行われる箇所が多数にのぼっており,新旧対照表の体をなしていない。
新旧条文の正確な対照がなされていない箇所
時効(16頁~21頁),連帯債務者の一人との間の免除等と求償権(53頁),債権譲渡における相殺の抗弁(73頁),弁済の充当(82頁~83頁),契約の成立(100頁~102頁),契約の解除(107頁~108頁),売主の責任(113頁~117頁),賃貸借の終了(129頁~130頁),請負人の責任(132頁) 。
条文』(2015/05/25)
商事法務 編
民法(債権関係)
改正法案
新旧対照条文』
(2015/05/25)商事法務編『民法(債権関係)改正法案新旧対照条文』(2015/5/25)も,上記の国会提出の改正案と同じく,条文番号が同じという形式的な理由で,内容的には異なる条文の比較対照が多くの箇所で行われている。
新旧条文の正確な対照がなされていない箇所
時効(32頁~39頁),連帯債務者の一人との間の免除等と求償権(53頁),債権譲渡における相殺の抗弁(120頁),弁済の充当(127頁~128頁),契約の成立(140頁~142頁),契約の解除(146頁~147頁),売主の責任(152頁~155頁),賃貸借の終了(168頁),請負人の責任(171頁) 。
このため,これらの資料からは,現行民法がどの箇所で,どのように改正されたのかを正確に判断することは困難である。特に,削除した条文を新設条文で上書きした場合には,それが新設条文であるにもかかわらず,以下に示すように,新設であることが表記されていない上に,あたかも,現行法の単なる修正であるかのような対照がなされている。
新設条文が(新設)と表示されず,単に,現行条文の修正として記載されている箇所
第148条(強制執行等による時効の完成猶予及び更新),第151条(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予),第167条(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効),第445条(連帯債務者の一人との間の免除等と求償権),第469条(債権の譲渡における相殺権),第543条(債権者の責めに帰すべき事由による場合),第560条(権利移転の対抗要件に係る売主の義務),第562条(〔目的物の適合性違反の場合の〕買主の追完請求権),第563条(〔目的物の適合性違反の場合の〕買主の代金減額請求権),第564条(〔目的物の適合性違反の場合の〕損害賠償請求及び解除権の行使),第565条(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任),第566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限),第567条(目的物の滅失等についての危険の移転),第634条(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)。
このように,これらの新旧条文の対照表は,新設条文なのか,それとも,単なる修正条文なのかの区別が明確になされていない。
特に,第543条(債権者の責めに帰すべき事由による場合)は,第541条,第542条が,債務者に帰責事由がなくても債権者に解除権を与える一方で,債権者に帰責事由がある場合には,解除をできなくするという,極めて重大な問題を含む新設条文であるにもかかわらず,条文見出しも中途半端であり,「解除権の剥奪」規定であることを表記もせずに,現行条文の単なる修正条文であるかのような記載がなされている。
新設条文であるにもかかわらず,単なる修正条文と扱うという表記の誤りが生じた理由は,削除した条文を削除条文として残さず,新設条文をそこに上書きしたからである。
もしも,改正に当たって,削除条文に新設条文を上書きするのではなく,削除する条文を「削除条文」として記録し,新設条文を「枝番号」として新設であることを明記するという方法を採用するならば,上記の新設条文が新設として表記されないというミスも,また,削除された条文が削除されたとの表記をしないという以下のミスも防げたのであるから,これらのミスは重大である。
現行条文が削除されたにもかかわらず,削除された旨の表示がなされていない箇所
第147条(時効の中断事由),第169条(定期給付債権の短期消滅時効),第445条(連帯の免除と弁済をする資力のない者の負担部分の分担),第469条(指図債権の譲渡の対抗要件),第526条(隔地者間の契約の成立時期),第527条(申込みの撤回の延着),第543条(履行不能による解除権),第562条(他人の権利の売買における善意の売主の解除権),第563条,第564条(権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任),第565条(数量の一部不足又は物の一部滅失の場合における売主の担保責任),第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任),第570条(売主の瑕疵担保責任),第589条(消費貸借の予約と破産手続きの開始),第599条(借主の死亡による使用貸借の終了),第634条(請負人の担保責任)。
このように見てくると,法務省および商事法務が,何のために新旧条文の比較対照表を作成しているのか疑問である。なぜなら,新旧条文の対照表は,通常は,「どの条文が時代に合わないものとして削除されるべきなのか」,「どの条文が,時代に適合するものとして新設されれるべきなのか」,「どの条文が,条文の形を保ったまま修正されるべきなのか」,「修正されるべき場合には,どの箇所が,どのように修正されるべきなのか」を,現行条文と新条文とを正確に対比しながら示すものであるはずだからである。
しかし,法務省の作成した上記の「新旧対照条文」,および,それを補充したはずの上記の商事法務の『新旧対照条文』 も,いずれの資料も,「どの条文が削除されるべきか」,「どの条文が新設されるべきか」,「現行条文のどの箇所が,どのように修正されるべきなのか」について,正確な対照を行わず,上記のように,数多くの誤りに陥っている。
市民生活の基本法典といわれている民法の改正に際して,仮にも,法務省が,国民一般,および,その代表である国会議員をナメてかかり,杜撰な新旧対照表で済まそうとしたとは思われない。もしも,法務省のスタッフでは,全力を出し切っても,自らのホームページで公表している程度の不正確な新旧対照表しか作成できないというのであれば,民法制定から120年の歴史に区切りをつける意味でも,民法の所管について,法務省から,正確な新旧対照表を作成できる他の省庁(例えば総務省とか,国立大学法人を所管する文部科学省とか)へと移管することも考えるべきではないだろうか。
いずれにせよ,このような現状に鑑みると,形式的な新旧条文の対照表ではなく,正確な新旧条文の対照表を作成することが緊急の課題となっていると思われる。
 
そこで,標記の書籍(加賀山茂 編著『民法(債権関係)改正法案の〔現・新〕条文対照表』<条文番号整理案付>信山社(2015年7月))を出版することによってその課題に応えることにした。
加賀山茂 編著『民法(債権関係)改正法案〔現・新〕条文対照表』<条文番号整理案付>信山社(2015/07)
加賀山茂 編著
民法(債権関係)改正法案の
〔現・新〕条文対照表』
<条文番号整理案付>
信山社(2015/7)
出版予定の標記の書籍の中心となる民法の「現行条文と改正法案との比較対照表」においては,従来の貴重な文献・判例との連続性を保持するために,(1) 条文番号をなるべく変更しないようにするための「条文番号整理案」を付し,その方針の下で,(2) 現行条文と改正法案とを正確に対照し,また,現行条文が変更されたのかどうかをわかりやすくするために,(3) 変更を受けていない現行条文の見出しを明記し,しかも,立法の行き過ぎと思われる最小限の箇所について,(4) 修正すべき代案とその理由を付している。
この書籍は,現在発売中であり,この書籍は,以下の特色を有している。
表から始まる横組みのページは,現行条文から改正法案を検索できるように工夫した第Ⅰ部と第Ⅱとで構成されている。
第Ⅰ部は,条文番号と見出しの現・新比較対照表が全体の詳細目次の役割を果たしており,現行民法のどこが削除されたり改正されたりしたのか,また,どの条文が新設されるのかが一目瞭然となるように工夫されている。
第Ⅱ部では,条文番号をなるべく変更しないという方針に基づく「条文番号整理案」に従って作成された,現行条文(現)と改正法案(新)との正確な比較対照表が掲載されている。 この第Ⅱ部が本書の最大の特色となっている。
裏から始まる縦組みのページは,第Ⅲ部として,改正案から現行民法の条文を検索できるように,法務省が作成した改正法案(新)と現行法(現)の比較対照条文をそのまま活かしつつも,最下段に,もう一段を追加し,その段において,比較対照条文の誤りの修正,改正法案の問題点の指摘,内容を修正すべき代案とその理由の記述等を行っている。
 
この書籍の出版が契機となって,今回の民法改正について,以下のような議論が,国会においても,学会においても,さらに,市民の間においても,活発に展開され,理性的で平和的な「新・法典論争」が沸き起こることを期待している。   
(1) 民法改正は,そもそも,必要なのだろうか。
現行条文と改正法案とを比較してみて,改正法案の方が,国民一般にとってわかりやすくなったと言える人は,皆無であろう。
この点で,今回の民法(債権関係)改正は,「国民一般にわかりやすいものとする」ために民法の見直しを行うべきであるとの法制審議会の諮問(2009年)に答えていない。
(2) 改正すべき箇所が外れているのではないか。
改正すべきは,法制審議会の諮問(2009年)にあったように,民法の「制定以来の社会・経済の変化への対応」を図ることであり,それは,急激に進展している,少子・高齢化,情報化,国際化への対応を図ることであろう。
第1に,少子・高齢化に対応するためには,三分化されて使いにくい成年後見制度(民法7条~19条など)を障害者の権利を尊重して,「補助」に一元化する等の抜本的な改正が必要である。なぜなら,民法の規定は,わが国が批准した障害者権利条約(2008年発効)の第12条第4項に違反するおそれがあり,民法改正の最も緊急の課題だからである。それにもかかわらず,今回の改正においては,この問題には,全く手がつけられていない。わずかに一か条だけ新設された民法3条の2(意思能力)は,少子・高齢化への一対応と考えられなくもないが,その効果を「取消し」ではなく,「無効」としており,現行の成年後見制度,および,錯誤に関する改正との整合性を欠いている。つまり,今回の改正は,少子・高齢化への対応として,的外れである。
第2に,情報化に対応するためには,民法85条(物を有体物に限定するという,旧民法よりも遅れた知的財産法制)の根本的な改正が必要である。それを踏まえて,金銭債権に関して,電子マネー等の新しいマネーへの対応が不可欠である。もっとも,銀行振込み・振替えに関する規定が,わずかに一か条だけ新設されている(民法477条)。しかし,このような預金通貨の規定を金銭債権の箇所ではなく,弁済の箇所に新設しているのも,的外れである。
第3に,国際化に対応するためには,古い判例法理を現代の国際的な契約法原理に基づいて変更することが必要である。特にインターネットによるパケット通信に対応すためには,対話者間の申込みと承諾(民法525条1項,2項で新設)とは異なり,通信の遅れに対応する規定が不可欠である。その点において,現行民法は,国際化に対応した二つの規定,すなわち,民法522条(承諾の通知の延着:Art. 21(2) CISG(国際物品売買契約に関する国際連合条約第21条第2項)に対応) ,民法527条(申込みの撤回の延着:Art. 16(1) CISG(同条約第16条第1項)に対応)を有している。ところが,今回の改正で,この2つの規定は,両者ともに削除されることになった。今回の改正は,パケット通信と対話者間の通信とを混同して,国際化に逆行するものであり,この点でも,的外れである。
このように,今回の民法(債権関係)改正案は,民法制定後の社会・経済の変化,すなわち,第1の少子・高齢化,第2の情報化という重要な点について,ほとんど対応できていない。また,第3の国際化の点についても,国際的な契約法の動向とは異なり,時代遅れの弁済の提供の効果(民法492条)の規定の放置,および,国際的基準から外れた受領遅滞の規定の強化(民法413条,413条の2),受領遅滞に該当する場合に生じる債権者からの解除権の剥奪(民法543条)など,むしろ,国際化に逆行している。
(3) 改正が必要だとして,条文番号をむやみに変更する必要があるのだろうか。
条文番号を変更すると,以下に述べるように,法律専門家にとって重要な作業である「条文による判例検索」に支障を生じさせる。
例えば,民法570条(売主の瑕疵担保責任)に関する判例を検索しようとしても,改正後は,目的の判例が見つからなくなる。
なぜなら,改正後の民法570条は,全く別の内容の条文(抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求:現行の民法567条に対応)へと変化してしまうからである。
民法改正後は,民法570条(売主の担保責任)に関する判例を検索しようとすれば,民法570条ではなく,実質的な新設規定である民法564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使),民法566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限),民法567条(目的物の滅失等についての危険の移転)をも併せて検索する必要がある。
さらに,改正後は,民法562条(買主の追完請求権),563条(買主の代金減額請求権)という実質的な新設規定についても,「売主の瑕疵担保責任」の判例が進展するので,それらの条文についても検索する必要がある。
このような条文番号の変更による判例検索への対応については,本来なら,「新旧条文の対照表」が威力を発揮するはずであるが,この点についても,法務省,または,商事法務編の「新旧対照条文」は,全く役に立たない。
この箇所(民法560条~570条)に関する法務省および商事法務編の「新旧対照条文」は,内容の対照が全くできていない上に,どの条文が削除され,どの条文が新設されたのか,全く不明とという大混乱に陥っているからである。 
削除条文は条文番号をそのまま残し,新設条文は枝番号とすることに統一すれば,現行条文の条文番号はそのままにして,内容だけを変更することが可能である。
このような方法をとらないと,100年以上にわたって蓄積されてきた貴重な文献や判例との連続性が破壊される。例えば,専門家にとって最も重要な作業である,条文による判例検索に重大な支障が生じる。
もしも,今回の改正がそのまま行われると,適用頻度の高い民法570条(売主の瑕疵担保責任)を含めて,少なくとも,59の条文について,条文での判例検索できなくなる(誤った内容の判例が検索されてしまう)。このため,判例検索システムの大幅な変更等に莫大な時間と費用を要することになり,国民経済的な損失が生じる。
上記のように,条文番号を変更しないで,これまでの文献との連続性を保持し,条文による判例検索を容易にする方法があるにもかかわらず,あえて,条文番号を変更し,国民経済的損失をもたらす必要があるのだろうか。
Ⅲ 民法(債権関係)改正の経緯と批判
上記の出版物を公刊した動機は,民法(債権関係)改正のための民法の一部を改正する法律案(2015年3月31日,国会提出)に対する根本的な疑問である。 

民法の一部を改正する法律案と現行民法との比較対照表(法務省のホームページより)
法律要綱案[PDF]
法律案[PDF]
理由[PDF]
新旧対照条文[PDF]
今回の民法の改正理由(2015/03/31)と,出発点となった法制審議会の諮問(2009/10/28)とを比較してみよう。
諮問第88号(法制審議会第160回会議(2009年10月28日))
民事基本法典である民法のうち債権関係の規定について、同法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする等の観点から、国民の日常生活や経済活動にかかわりの深い契約に関する規定を中心に見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。
改正案の理由(国会提出(2015年3月31日))
社会経済情勢の変化に鑑み、消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備、法定利率を変動させる規定の新設、保証人の保護を図るための保証債務に関する規定の整備、定型約款に関する規定の新設等を行う必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
改正理由と諮問とを比較してみると,以下のことがわかる。
第1に,「〔民法〕制定以来の社会・経済の変化」,すなわち,(1)少子高齢化(意思能力の規定の新設だけでなく,わが国が批准した障害者人権条約に違反するおそれがある成年後見制度の抜本的見直しが必要),(2)情報化(銀行振込みだけでなく,電子マネーへの対応が不可欠),(3)国際化(判例の準則と国際条約との矛盾の解消が必要)に十分に対応しているとはいえない。
第2に,「国民一般に分かりやすいものとする」という目的が果たされていない。そもそも改正理由の項目から消えている。
つまり,民法改正法案は,諮問に答えているとはいえない。 一からやり直すべきであろう。
第1に,「民法制定以来の社会・経済の変化とは何か」を具体的に列挙した上で,それぞれに対応する法律案を作成すべきである。
第2に,もしも,「国民一般ににわかりやすいものとする」ことができないのであれば,法制審議会は,諮問をやり直し,「…同法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り」,「法曹にとって明確な判断基準を示すものとする観点から…見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」と変更すべきである。
このことを通じて,デュープロセスに基づいて,改正手続をやり直すべきではないだろうか。 
民法の一部を改正する法律案の個々の条文の具体的な評価については,このホームページの2015年度「債権総論1」の【ビデオ教材】シリーズの箇所で,改正および新設条文を紹介するたびに,詳しく論じているので,参照いただけると幸いである。その要点を述べると以下の通りである。
先に述べたように,今回の民法(債権関係)改正においては,民法制定以来の社会・経済の変化に対応していない。
それにもかかわらず,今回の「改正案の理由」には,社会経済情勢の変化に対応するものとして,以下の4つの点を挙げて,民法制定後の社会・経済の変化に対応しているかのような記述がなされている。しかし,これらは,以下に述べるように,欠陥だらけであり,民法制定後の社会・経済の変化に対応するものとはなっていない。
(1) 消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備による領収書保管期間の長期化
消滅時効の期間を5年または10年に統一することは,一見したところでは,債権者にとって時効管理が単純化されるばかりでなく,国民一般にとっても分かりやすくなるようにみえる。しかし,今回,不幸にも削除されることになった短期消滅時効の制度(民法170条~174条)は,国民の家計管理(特に,領収書の保管)にとって,なくてはならない重要な役割を果たしてきた。
私の個人的な経験に即して述べると,私は,ある書籍を著名な出版社から直接購入したことがある。その約2年後に,その出版社から「代金をまだお支払いいただいておりません」との電話があり,売買代金を二重に請求されたことがある。幸いにも,筆者が領収書を2年間保管していたため,このときは,二重払いの危険を回避できた。
この例のように,民法172条(2年間の短期消滅時効)のおかげで,私たちは,これまで,売買代金の領収書を2年間保存した後は,これらの領収書を安心して廃棄することができた。
ところが,今回の民法(債権関係)改正によって短期消滅時効の規定(民法170条~174条)がすべて削除されるため,すべての家庭で,売買代金の領収書を5年間,場合によっては,10年間にわたって保管しなればならなくなるという不都合が生じる。
このような改正が,国民にとって有益といえるかどうか,はなはだ疑問であり,少なくとも,私には,社会経済情勢の変化に対応した改正とは思えない。
(2) 法定利率を変動させる規定の新設によるわかりにくさの増大
現在の民事法定利率は,年5パーセントである。これが,今回の改正(改正案404条)によって,まず,3パーセントに引き下げられる。「ゼロ金利」の時代に法定利率が引き下げられるのは,当然である。
しかし,この利率は,民法改正によって変動性となり,3年ごとに法務省令によって変動することになる。もちろん,その変動の算定方法は,改正案404条に明記されているが,現実に何パーセントになるかは,3年ごとに民法を改正しない限り,法務省令を見る必要があり,国民一般にとって,極めて分かりにくくなる。
(3) 保証人の保護を図るための保証債務に関する規定の整備による連帯保証人の保護の後退・悪化
今回の民法(債権関係)改正の目玉が,保証人の保護である。保証人に対する債権者の情報提供義務の新設(改正案458条の2,485の3),根保証契約の適用範囲の拡大,事業に係る債務についての保証契約の特則の新設など,一見,保証人の保護に資する改正のようにみえる。
しかし,現在の保証契約は,そのほとんどが,連帯保証契約であり,連帯保証契約について,保証人が保護されることになるかどうかが,保証人保護の判断基準となるというべきである。
連帯保証人の保護の観点から見ると,今回の民法(債権関係)改正は,連帯保証人の保護を後退させており,改悪といわざるをえない。
現行民法によれば,連帯保証人は,連帯債務者の保護の規定(民法434条~440条)の規定の準用により,例えば,連帯保証人の一人に生じた免除によって他の連帯保証人は保護され(民法437条の準用),連帯保証人の一人に生じた消滅時効の完成によって他の連帯保証人も保護されてきた(民法439条の準用)。
ところが,今回の民法(債権関係)改正によって,肝心の民法437条(免除の絶対効)も,民法439条(消滅時効の絶対効)も,ともに削除されることになったため,連帯保証人の保護は,大きく後退している。
このような保証人保護を後退させるという立法上の失態が生じた原因は,一方で,保証人を保護する改正を推進しつつ,他方で,連帯債務については,絶対的効力の大幅な制限等,債権者の保護を著しく強化したためである。
今回の改正案の起草者たちは,連帯債務と連帯保証とは,「負担部分ゼロの連帯債務=連帯保証」を通じて,相互に連続している点を見逃している。連帯債務について,債権者の保護を強化し,連帯債務の絶対的効力を制限すればするほど,保証人のほとんどを占める連帯保証人の保護とは逆行する結果に陥ることに気づいていないか,これをあえて無視したため,「保証人の保護」という立法理由とは裏腹に,保証人のほとんどを占める連帯保証人の保護を後退させるという,不当な結果に陥っているのである。
これが,今回の「改正の目玉」とされている保証人の保護に逆行するものであることは,明らかである。
(4) 定型約款に関する規定の新設による不当約款の基準の不公正・不明確
今回の民法(債権法)改正のもうひとつの目玉は,定型約款の規定の新設であり,約款の有効性と無効の基準を明らかにすることを狙っている。
ところが,現実には,約款の有効性に重きを置きすぎて,不当な約款を無効とするための公正かつ明確な基準の設定がおろそかになっている。
最大の問題点は,消費者契約法第10条と比較してみるとよく分かることであるが,無効とすべき不当約款の判断基準から,「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定」,すなわち,「任意規定」という公正かつ明確な概念が脱落し,その代わりに,「取引上の社会通念」という,約款の無効とは逆に,約款の有効性を担保するのに好都合な概念を基準としていることにある。
約款は,いったん作成され,合意されたものとみなされると,それが,「取引上の社会通念」とされることになるのであるから,それを約款の無効の判断基準としたのでは,公正な判断基準とはなりえないのであり,定型約款の規定を新設した意義を大きく損ねている。
Ⅳ 新法典論争を引き起こすためのキャッチ・コピー(民法改メテ 民法体系滅フ など)
新・法典論争を引き起こすスローガンとしては,以下のものがあるように思われる。

穂積八束流のコピー
民法改メテ 民法体系 亡フ
民法95条1項1号の錯誤(意思の不存在)の効果を取消しとしながら,表意者に帰責性がある心裡留保(93条),通謀虚偽表(94条)の効果を無効のまま放置している。
←同様にして,事理弁識能力を欠く場合には取消しとしているにもかかわらず(9条),意思能力を有していない場合の法律行為は無効としている(3条の2)。このように今回の改正案は,意思表示理論の中核部分が矛盾だらけとなっており,改正案が成立・実施されると,民法の体系は完全に破壊される。
民法の教師は,良心的であろうとすれば,民法の講義をすることができなくなると思われる(民法改メテ 民法教師 滅フ)。
民法改メテ 連帯債務者 亡フ
連帯債務者を保護する民法437条,439条の削除←改正理由としての保証人保護の趣旨と矛盾している。
民法改メテ 電子商取引 亡フ
パケット通信の遅延問題を解決できる民法522条,527条の削除←Art.21(2) CISGにも,Art. 16(1) CISGにも反している。
民法改メテ 解除 亡フ
受領遅滞の債権者から解除権を剥奪するという民法543条の改悪)←Art.80 CISGの解釈から外れている。
民法改メテ 判例検索 亡フ
条文番号の変更によって,少なくとも59の条文で,判例検索に誤りが生じる←無意味な条文番号の変更が多い。
板垣退助流のコピー
民法学死ストモ 社会通念ハ死セス
九つの重要な場面((1) 錯誤の判断,(2) 善管注意義務違反の判断,(3) 履行不能の定義,(4) 帰責事由の判断,(5) 弁済受領権限の有無,(6) 特定物の現状引渡の判断,(7) 担保の喪失の場合の債権者の免責の判断,(8) 催告解除の可否の判断,(9) 定型約款の有効・無効の判断)で,濫用の危険が予想される「社会通念」が判断基準として明文で規定されることになる。)
←社会通念という融通無碍の概念を民法の主要条文に取り込んだことは,「民法学」の「死」を暗示する。
加賀山茂「民法(債権関係)改正が市民生活及びビジネスに与える影響と問題点」

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新旧対照表について

新旧対照表について
この新旧対照表は、原則として条を単位として改正前後の規定を対照しています。項又は号の位置では行をそろえていません。番号が連続する複数の条の削除は、原文では「第○条及び第○条 削除」又は「第○条から第○条まで 削除」のように一括されますが、この新旧対照表では、条ごとに分け「第○条 削除」を繰り返しています。
改正前後で条、項又は号の番号及び内容が同じ場合、その内容を〔略〕としています。見出しや章名等は、内容に変更がなくとも〔略〕とはしません。号がイロハ、(1)(2)(3)等に細分されている場合は、号全体を比較して内容が同じか否かによります。
目次に改正がある場合は、目次全体(編に分かれているときは改正を含む編のみ)を対照しています。
一つの改正法に異なる施行期日が規定された場合には、施行期日別に新旧対照表を分けています。また、同じ施行期日に複数の改正法が施行される場合にも、改正法別に新旧対照表を分けています。

 

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